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じいさん連中がもつ強さの片鱗を読む雑誌がちょっと面白すぎるのだ!

創刊からすでに17回の発行を重ねた雑誌を遅ればせながら手にしてみた。
遅ればせながらと言うか、そもそもターゲットが『60歳以上』の雑誌なので、40代のボクが読む雑誌ではないけど。
そう、これは『チョイ悪オヤジ』どころではなく、孫煩悩爺さんをターゲットにした情報誌。
だけど、爺さん向けと侮ることなかれ。
扱われている情報の質といい、鮮度といい、若年層向け情報誌なんかメじゃない面白さが。

なにより、編集部ちょっと遊び過ぎだろコレ!
今更手にしたことをちょっと悔いるほどの誌面作りで、軽くショックを受けているわけです。

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雑誌のタイトルは『孫の力』
そのイメージキャラクターは爺さんペンギンの『ぺんじい』
誌内では、孫の力を購読する世代を『ぺんじい世代』と呼んでいます。

ぺんじい世代の心情が3ページ目に綴られているけど、これがなんか……すげえ!
濃いというか、ちょっと気持ち悪いというか、なんかスゲえ!

この組み方で気付いた方もいるかもしれないけど、孫の力を作ってるのはソトコトと同じ編集部。
奇数月に発売される隔月誌です。
今回購入したのは3月に発売された号で、月末には次号が発売予定。
ちなみに特集は『死ぬまで仏教、死んでも仏教』
ちょっとヘタなサブカル雑誌な雰囲気すら漂わせてる感じ。
前号は『東京五輪を見てから死ぬ』、さらに前号は『死ぬまでマンガ
死ぬって言葉が身近すぎるわりには、死ぬつもりなんてないよね。

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今回、この雑誌を手にした理由はこの特集がおもしろかったから。
『ねこを抱いて死にたい』って、今号も死にたいの意味というか重さが違う。
あと、ジ●リから訴えられないかスゲー心配にもなるイラスト。
すこしやりたい放題すぎるんじゃねえかとニヤニヤしちゃうボクがいる。

もしかしたらボクが60代をナメてるのかもしれないけど、『誌上初!360度のねこが動き出すねこAR』とか。
専用アプリをiOSやAndroidにインストールして使うわけで、これ爺さん世代向け雑誌なのホントに?

爺さんの息子娘が持ってるスマホで孫と遊ぶためのARなのかもしれないけど。
ちょっと購読ターゲットと企画のギャップを感じてしまい、いまどきこーゆー雑誌も珍しいよね。
保守的ではない雑誌は、それだけで世代を超えた面白さを作れると思うわけです。

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『POWER OF MAGO』ってなんだよ。
いや、誌名をそのまま英語にして……ないよ!MAGOだよ!
あまりにベタな、しかしベタとは王道にして正道でもあるわけで、ボクは好きです。

しかし、内容はちょっとおかしい。
モデルの着てる服が『ヴィンテージブルゾン』とか『ヴィンテージデニムジャケット』とか、とにかくヴィンテージ。
爺さん向けだからってヴィンテージである必要ないだろ。
添えられたコピーは『ヘヴィーデューティはアメカジとメインクーンのタフな関係』って、ボクが意味わかんないし。
だけど写真をよーくみると、シャツでもカットソーでも裾をパンツに入れてるし。
小ネタがなかなかツボ。

しかも、ちゃんと読んでみるとこれがなかなか上手い屁理屈が次から次へと。
へんなところで説得力をもった構成。
侮れない。
『65歳で子猫から飼うと80代でねこの介護だから10歳くらいのねこを飼え』とか、具体的すぎるのもツボ。

なぜかオシリーナがヒョウ柄タイツを着て、ねこの仕草を教えてくれる記事も。
爺さんって枯れてるようで枯れてないよね、ほんとに。

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目的の特集『ねこを抱いて死にたい』が期待以上に面白くて満足したわけですが。
しかしそれ以外の記事もちょっと濃い。
爺さんの濃さとはコレなのか。

そのひとつが『妄想』
『戸田恵梨香に翻弄されたい』ってさ。
いや、そろそろ枯れてくれよとツッコミたいところだけど、これがなんか若年妄想とはひと味違う。

戸田さんは「イカしてる」
旧世代イディオムで失礼だが、いまの言葉で言ったら「カッケェ」なのか。
ニュアンスが違うなあ。
やっぱり「イカしてる」んだよ。
 
「イカす」の用例って色々。
 
ちょいといかすぜマドロス娘、
いかすじゃないか西銀座駅前、
いかすぜ!この恋、
いかすバンド天国、
なんてのも。
 
『孫の力』 No.17 / P.132〜133より

昭和だ。
まちがいなく、爺さんの世代向けだ。
でも8ページにおよぶその妄想はまったく爺さんだからということもなく。
なんというか、男ってバカよねーと男が読んでも思ってしまうくらいに男の子な妄想。
なにか近いものを知ってるなあ。
あ、そうだ、リリー・フランキーだ。

ちょっとバカっぽくて、ちょっとまじめで。
なんか子供みたいだけど、人生を折り返した人が持つ達観も感じる。
カッコつける必要はないけど、みっともないことはしたくない。

リリー・フランキーからは、そんな空気を感じるのです。
この雑誌全体に漂ってる空気は、リリー・フランキーのそれに似てるのかもしれない。
 
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こうした特集記事以外にも、情報誌としてもおもしろい。
今号発売日から次号発売日までを『GOLDEN 60 DAYS CALENDAR』として日記形式で様々な情報を掲載。
だけどこれが爺さん向けとは思えない広さと深さがあるのです。
ホーブディング社の自転車ヘルメッット、阿佐ヶ谷アニメストリート、オカピ、「天のや」玉子サンド、アガスティアの葉、フランク三浦、大雄山最乗寺、寺久保エレナ、フォン・ユール邸、祇園「いづう」、銀座松坂屋。
これらが1つの雑誌で同列に扱われるというのは、ちょっと珍しいんじゃないでしょうか。
 
雑誌の面白さを味わいたいならば、孫の力を是非手に取ってみていただきたい!

孫の力 第17号 2014年 05月号amazon.co.jp

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