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これまでの愛と、これからの愛と。

ボクは音楽が好きだ。
世の中にはケーキが好きな人もいるだろうし、パンが好きな人もいるだろう。
肉が好きな人も、川魚が好きな人もいるだろう。
だけど、それらすべてを分け隔てなく『食べるのが好き』という人のほうがボクは好きだ。
小説もエッセイも詩文もマンガも分け隔てなく『本が好き』と言える人がボクは好きだ。

それらは、食への感謝であり、食への愛だと思う。
それらは、本への感謝であり、本への愛だと思う。
それらは、作るために関わったすべての人への感謝であり、作られたものに関わったすべての人からの愛だと思う。

ボクは音楽が好きだ。
雑誌愛を公言してるこのブログだけど、愛の深さは比較にならないほど音楽へのほうが深い。
雑誌からは知り考える楽しさを与えられてるけど、音楽には生き方や考え方の根本を鍛えてもらった気がする。
そうした音楽を作り、奏で、歌い、編集し、記録し、売る、そのすべての人に感謝している。
その音楽のジャンルが何であれ、いつの時代につくられた音楽であれ、作ることに関わった人たちの愛情がそこにある。

音楽は常に革新を繰り返してきたと思います。
人は好きな物に対して、より理解しようとする。
理解することは、より深い愛情に繋がるから。
そしてその理解は時に大きな変化を与えることにも繋がる。

革新というのは愛情とイコールだと思う。
弦を弾くことで音を生んでいた楽器に、抑える場所(テンション)で音階を与える。
弦の特性を理解し、再現性を定め、その結果、音楽に豊かな広がりが生まれる。
その楽器に電気を利用することで音量ははるかに増え、様々な音色に変化させることができた。
それまでの楽器をよく知ることで得られるそうした着想こそ、音楽への愛情の証じゃないでしょうか。

革新というのは演奏する部分に限らない。
リアルタイムに聴くしかできなかった音楽は、レコードとして記録が可能になり、いつでも好きな音楽を聴けるようになった。
その後CDとなりデジタル化された音楽はより身近になり生活のなかに浸透した。
そして今、音楽はMP3をはじめとするデータファイルに置き換えられ、より生活に広がりやすい形態へと変化を続けている。

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知識や技術は愛情をより深く広くするための手段であり、その中でもそれまでの常識を覆すものが革新だと思う。
革新をすぐに受け入れられない人もいて当然だけど、変化とは敵じゃないはず。
新しい世界、新しい形。
それらは新しい愛情の形のひとつでしかないと、ボクは思うんです。 

音楽も本も、それらはアートではなくエンターテインメントの1コンテンツだと思う。
エンターテインメントである以上、そのほとんどは消費され消えて行くのが自然だと思う。
それでも一部の人の中にはいつまでも残るだろうし、それでいいとも思う。
世の中にある100曲の中から1曲でも、100冊の本から1冊でも、自分の中に残るものと出会えたら、それは最高なんじゃないかな。
そしてたぶん、そうして残る音楽や本は、それに関わった人たちの愛情が深いものなんじゃないかな。
愛情なく作られたものは、たぶん誰の中にも残ることなく消費されるんだと思う。
 
 
今号のWIRED 62〜72ページは、ボクとまったく同世代のアメリカ人と、その音楽愛についてのインタビュー。
雑誌のインタビューを読んでいて、これほどうれしくなったのはいつ以来だろう。

ボクも音楽が好きだ。
でも、ボクなんかまだまだ愛が足りないと痛感させられる人が世界にはいる。
ボクはいったい何様だ?って感じもあるけど、だけど本当にそれがうれしいのです。
そして、こんなインタビューを引き出してくれる雑誌があることもうれしいのです。

WIRED VOL.8 GQ JAPAN.2013年7月号増刊amazon.co.jp


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