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様式、感性、情緒、そして理性。人が感じる美しさの定理。

美しさ。
とても言葉にするのが難しい概念だと思う。

音楽的な美しさは、様式美と言えるかもしれない。
五線譜に定められた記号を用いることで再現性を担保する。
様式とは再現するための手順や形式に存在する洗練された美しさである。

美術的な美しさは、感性の美しさと言えるかもしれない。
ある個人により発現される唯一無二の美しさ。
感性の美しさとは、個人の内面により描き出される刹那の美しさである。

言葉の美しさは、情緒の美しさと言えるかもしれない。
情緒とは人間味とも言えるかもしれない。
情緒の美しさとは、万人と感情を共有することで生まれる美しさである。

様式、感性、情緒。
いずれの美しさもその根底には『コミュニケーション』があると思う。
秀でたコミュニケーションツールは、そこに美しさも併せ持つようになるのだろう。

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『π(パイ)』という記号を多くの日本人は理解していると思う。
日本語では『円周率』と呼び、おそらくもっとも有名な数学定数のひとつだと思う。
英語では『the ratio of the circumference of a circle to its diameter』とか覚えるだけで数学の公式1つ覚えられそう。
それくらいに長いし、語源とか考えるとギリシア語とかそっちに流れて行くのでちょっと敷居が高くなる。

しかし『π』というたった1つの言語的要因で時間と場所を超えたコミュニケーションが可能になる。
しかも『π』という文字は唯一の意味を与えられていて、この意味は文字を与えられた時点から未来永劫に至って不変となる。

円周率とは実際、その実態が解明されていない定数のひとつだ。
小数点以下10兆桁まで計算されているが、その先はおそらく無限に続くことになる。
いわゆる無理性と超越性となるこの定理は、その解のひとつひとつ唯一無二で刹那的となる。

そして『π』とは厳然と定められた一定の数値であり、そこに自由な解釈は存在しない。
『円周率は3.14159』と定義されれば、それに従うことで解は絶対のものになる。
解に至るための手順であり形式が、この1つの文字に内在しているのである。
 
 
ボクは数学者じゃないし、あまり日常で数学的な云々と関わりたくないと思う側の人間である。
しかしそんなボクにして『数学は美しいか』と問いかけられれば。
様式、感性、情緒。
それらすべてを含め、そしてそれを展開するに必要な理性をも持ち合わせたものこそが数学ならば。
理性をもってコミュニケーションを成す、それが数学なのであれば。
ボクは答える。
『数学は美しい』と。
 
 
……なんてことを長々と語ってみたくなったので躊躇なく語ってみた。
もともと数学好きな側の人間であるボクですが、なかなか『読み物』として数学を扱う雑誌は珍しく。
数学の本質は『コミュニケーション』ということで、意味不明な数式より意味の通じる日本語で書かれてるのが良い感じ。
なかには『東大の問題は美しい』的な、凡人の理解を超えた(でも読んでみるとホホゥと思える部分もある)記事もあったり。

『チャンスあれば数学さんと仲良くなってみたいかもしれないけどなんかココロ狭そうでちょっとコワイ』
そんな印象のアナタもこれを読めば数学さんとコミュニケーションできるようになるかもしれない。
かも、しれないよ?

考える人 2013年 08月号amazon.co.jp


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