ルポルタージュ。
様々なできごとを現地からダイレクトに送る報道スタイルとして定着した感のある言葉。
映像の世界ではドキュメンタリーとなり、文字の世界ではノンフィクションとも呼ばれるスタイル。
でも語源となるフランス語では『探訪』とするのが正しい言葉です。
ボクがルポルタージュという言葉から真っ先に思い浮かべるのが『深夜特急(新潮文庫)』
沢木耕太郎がアジアを旅したときに書きまとめた、日本の紀行本を代表する名著です。
この本を読んで旅に出たくなった人だけではなく、実際に旅立った人も少なくないでしょう。
本の形で旅を読むのは面白い。
まったく知らない土地を、その人の目と思考と感覚を通じて感じる。
文字だけで表現されたそれらを、読み手のイマジネーションで膨らませる。
そこで描かれる異国の風景はとても魅力的で、怪しく、痛快で、危うい。
旅に求められるすべての要素を自分の中でいかようにも構築することができるのです。
本という媒体を介して見知らぬ土地での旅を疑似体験する。
まさに本というものをもっとも素直に楽しめるもののひとつがルポルタージュだと思います。
ボクたちは生活の中でさまざまなできごとを知ることができます。
遠い異国で繰り返されている内紛・内戦。
国名の改名。
繰り返される不条理な軟禁。
そうした一方的な情報から偏ったイメージを持ってしまうことも珍しくありません。
様々な問題が解決し安定に向かっているとしても、いちど作られた印象が払拭されるにはキッカケが必要です。
そうした国の中でも、ボクらと同じように仕事をして日々を平和に暮らしてる人々がいる。
旅とは、そんな普通の人々と関わり、その国本来の姿を知るいちばんの方法かもしれません。
そしてルポルタージュは、見て感じたそのままを脚色なく書き伝えるもの。
その文章の向こうに息づく、その土地の人たちを感じることができる素晴らしいものです。
この雑誌『’Scapes』は、沢木耕太郎と比べれば文章から感じるチカラも弱いです。
旅は穏やかで優しさに溢れ、危うさなどのスパイスは感じられません。
しかしそれは、ミャンマーという国と、そこに住む人々の柔らかさなのかも知れない。
繰り返された悲しい時間からの解放に、ようやく得られた安らぎに満ちているように感じます。
これからどんな国での、どんな旅をボクに読ませてくれるのか。
どんな風景と、どんな人々をボクに見せてくれるのか。
新しい雑誌ですが、次号もすこし楽しみになっています。
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